「これまでのアニメ、これからのアニメ」~ガイナックス×スタジオディーン 日本のアニメ100周年記念トークセッション~ part①

突然ですが皆さんアニメについてどう思いますか?

そう、皆さんが子供の頃から毎日楽しみに見ているアニメについてです。アニメは今や日本を代表する文化の一つとなり、老若男女問わず多くの人がアニメに何かしらの形で触れています。そして、そのアニメは2017年に100周年を迎えます。これを機会にmedia100では、アニメについてもっと深く知ることを目標にアニメ講演会を企画いたしました。アニメ制作の名門たるスタジオディーンとガイナックスにご協力いただき、スタジオディーンからは取締役野口和紀様、ガイナックスからは代表取締役山賀博之様をお招きして三部構成でお話をお聞きしました。

今回の記事ではそのうちアニメの「これまで」を語っていただいた第一部と第二部の模様をご紹介します。

第1部 アニメの今を山賀さんと野口さんのキャリアから語る

「もともとは映画監督になろうと思っていた(山賀)

まずお二人の自己紹介をお願いいたします。

山賀:山賀です。自分はアニメという仕事をやっている人間ですが、本当にこの仕事が大好きです。常にチャレンジしていないとうまくいかないという妙な厳しさが楽しい。30何年やっていて、いつ倒れてもおかしくない。それでも、できれば90過ぎまでこの仕事をしたいなと考えています。そんなことをやっているアニメの作り手です。

野口:野口です。私の隣に大先輩の山賀さんがいらっしゃいまして、大変緊張しています。私は高校生の頃に山賀さんが作ったDAICON3、4のオープニングアニメを見せてもらいました。いわゆる大阪芸大※1の活躍を見て業界に入ったので、今日お会いできて大変嬉しいです。私がなんでスタジオディーンという会社に入ったかというと、就職活動で最初にとりあえずスタジオディーンに行ってみたら、その場で「今うちの会社に入るんじゃないの?(笑)」と言われたからなんです。「もし気が変わらなかったらもう一度連絡して」と言われて、これで内定もらったのかな?と思いました。

山賀さんはどういった考えからこの業界に入ったんですか?

山賀:僕は高校二年生のときに、自分は映画監督に向いているなと思ったんです。映画監督になろうと思って、親にねだってすごく学費の高い大阪芸大に入りました。当時は就職も視野に入れていましたね。そこで入学して初めて、映画を作ってご飯を食べることの大変さに気づきました。どう考えても無理なんですね。そのことに気づいた頃に、なんの縁もなかったアニメという分野に気づきました。それまではアニメなんて子供が見るもんだろうくらいに考えていたんです。当時、1981年にはガンプラがブームになっていました。ガンプラを買うためにエスカレーターに並んでいた小学生が将棋倒しになったというニュースを見て、アニメのインパクトに気づきます。正直いうとお金のためにアニメの業界に入ったようなものなんですよ(笑)。(実写の)映像で食っていける分野は早慶東大が占めている。でもアニメはそういうことは関係なかったんです。映像を作るのであればアニメでやっていくしかないという理由でこの業界に入りました。

「仕事っていうより?(野口)

なるほど、お二人は長くアニメ業界に携わっていらっしゃいますが、アニメを作る魅力はなんですか?

山賀:僕は大邸宅を建てられる訳ではないけれど、生きていくためにお金を稼ぐだけでも楽しいんです。お客さんに喜んでもらうために何かを作る、プラモデルや本などの派生していく商品を作る。そういったものをお客さんが買って、自分の生きていくための糧になるというのが嬉しいんです。僕は社長をやっているけれど、経営の仕事をやっているという感覚はありません。ものを作る、お客さんが喜んでくれる、そしてお金が入ってきて生活ができる。お金と直結しながらクリエイティブな話ができるんです。あるアニメのこのシーンの演出を考えなさいとかそういうことをするのではなく、作ったものが生活に直結していることの喜びがあります。

野口:私は仕事として続けているというよりも、楽しいからやっているという感覚が強いです。あまり仕事だと思ってないんですよ。でもそれを人に強いると結構大変なことになるんですね。だから必ず就職の説明会をやる時に結構大変ですよという話はするんです。親からも反対されますよね。私も親から相当反対されました。でも、やっぱり好きなことをやっているということはすごく重要なことなんです。入ってくる人たちにはそういう話をしてうちにきてもらっています。労働の面で色々な問題が起きるっていうのは、無理やり仕事をさせているっていうことのですが。それで、仕事をよく間違えられますよね?

山賀:うんうん。

野口:アニメを作ることが仕事なんですか?って言われるんです。

山賀:「今日お休みですか?」なんて言われますね。休みといえば一年中休みですけど、仕事だといえば一年中仕事しています。

野口:好きなことをやることに仕事も何もないと思うんですよね。世間一般では「残業するな」っていうんですよね。仕事したいんですっていってもするなって言われる。本当に好きでやりたいことをやっているのに、どうしても無理やり働かされているって、イメージを植え付けたい勢力がある。ちょっと変だと思うんですよね。

山賀:どうしても、就職をするっていう意識が強いんでしょうね。日本の大人の社会ではプロダクトを作るってことが定番なんです。けれども僕らは芸能の仕事をやっている訳でプロダクトを製造しているわけではない。最近アニメ業界が海外に認められてきて、周りからよく大人の仕事をしましょうと言われるんだけれども、僕らがやっているのは芸能の仕事ですから。といってもなかなかわかってもらえないんです。我々にとってはサークル活動をやっているみたいなものなんですが。

第二部 アニメ自主制作を行う学生たちに聞く

実際に大学のサークルでアニメを作っている中央大学、武蔵野美術大学、多摩美術大学の三校の学生さんたちの作 品を上映してそれを鑑賞しながら、制作の現場について詳しく聞いていきました。その中で印象的だった話を抜粋します。

「アニメ業界だけが唯一芸能の中で食える仕事なんですよ(山賀)

中央大学アニメーション研究会:実際のアニメ業界のイメージは結構な激務だというイメージがあります。制作のクオリティやお金の話について、どのように均衡をとっていますか?

山賀:中央大学といえば大学として立派で、普通に考えたらあんまりアニメ業界に勤める大学じゃないですよね。だから、そういう意味では文化的にはやや就活っていう感覚でものを見がちだと思うのですが、僕らがやっていることはある種芸能の世界なので、就職ではないんですね。アニメ監督になるとかプロデューサーになるとか、声優、絵描きになるっていうのは、就職という形を取っているから入りやすいんですが、サラリーマンの就職とは全く違う世界なんです。そう意味では激務といえば激務になります。でも学生が大学に通いながらアニメ作っていたら激務になりますよね。だから僕らは大学の勉強をしなくて済むだけなんです。学生の方がタフなんですよ。僕たちは、普通の会社員が有給とったり休みの日に作っていたりするようなことを24時間使って作れるという幸せがあるんです。役者とか歌手のような芸能に関わる人はみんな同じようなことだと思うんですけど、アニメだけがなぜか激務として情報が出てしまう。それはアニメがそれだけメジャーになってきたっていう喜ばしいことなんでしょうけど。でも実を言うと、最初に話した僕の目論見は全く外れていないんです。日本のいろんな芸能の中で唯一アニメだけが食える仕事であるってことなんですよ。アニメだけが唯一激務じゃないんです。他はもっと大変なんです。実写映画なんてアニメの10分の1しか儲からないんですよ。年収5万円なんて人がたくさんいるんです。例えば僕の初任給は6万円でしたけど、僕の周りで音楽をやっている人、演劇をやっている人に僕と同じお金をもらえる人はいませんでした。だから僕はアニメってお金になるなって思いましたね。比較の問題なんですよ。これは銀行に勤めた人に比べれば低いけれども、芸能という枠に絞ってみると違うんです。何も、だから給料が安くてもいいんだなんて言っているわけではないんです。でもアニメだけが激務で、給料が安いわけではないんですよ。みんなそういうものがやりたいから、やっている。休み時間潰してやっていたことを24時間できるよっていうのは本当にハッピーだ、そういう世界なんです。

3Dアニメが台頭しても2Dアニメは廃れない(野口)

つりがね荘:最近の3DCGアニメーターの記事を見ると、新人育成が充実している印象を受けました。これからのアニメ業界において3Dアニメが台頭してくるような予感を感じたのですが、業界の方々から見て日本にフルCGアニメは根付いていると思いますか?また、一方で手書きアニメーターの教育エイドがあまり充実しているという噂を聞くことがあります。2Dアニメーター教育の現状は実際どうなっているのかお話しいただければ幸いです。

野口:そうですね。まず3Dニメーターに関して言うと、あまり2Dアニメーション業界に入ってこないんです。感覚的にいうと、3Dニメーション業界で筆頭となるのはゲーム業界なんですが、我々とは最初からバジェットが違うので、アニメーションにお金がかけられる。お給料も良いんです。アニメーションの業界はそもそも ゲーム業界と契約形態が違うので、どうしても3 Dニメーターとして入ってくる人が少ないんですね。だからその少ない人達は重要視されるんです。予算的にも人材的にも、作品をオール3Dで作れる環境にないので、手描きに良く似せた、一見3Dアニメーションには見えない方法で、少ない3Dのカットを最大限効率を高めて勝負する。それは海外のアニメ、いわゆるディ ズニー、ピクサーをはじめとする3D作り込みとは全くちがう進化形態を歩んだんですね。まあ、セルシェイドと2Dの一体化したアニメーションっていうのは、他国ではほとんど一般化しないって 感じですね。ガラパゴス化した日本の手法だと思っています。ただそういう意味合いでいうと私にはベタ打ちの3Dアニメーションっていうものには魂を感じられないんですよね。 2Dアニメっていうのは11枚を描くことで魂を入れているっていう感覚があるんです。ですから、3Dアニメーションの作り込みも、いかに手付けでタイミングを付けて行くか、魂を入れていくかが重要になってきます。11枚描くという2Dニメーションの作り込みは絶対に廃れないし、そこが廃れたら日本のアニメーションの未来はないと思います。2D教育の話をすると、教育の仕方がどうあれ、2D​3Dあまり変わらないんですよね。ただ2Dニメの教育は徒弟制みたいなところが非常に強くて、教えてもらうというよりは盗むという方法を我々4050代の世代は叩き込まれました。そうするとどうしても教育という意味でいうと手薄なように見えるんですが、我々の中でいう教え込み方っていうのはやっているつもりです。

山賀:そうですね、聞いてくれればいつでも教えるんだけど、わざわざ言わないよってところがある。

野口:そこがまたよろしくないところなんです。我々が入ってくる人たちにレールを引かなきゃいけないんですが、なかなかに大変です。教える気があるので聞いてくれればすごく教えるんですけど、教える側と教えられる側に世代差があってそこがうまく動いてないですね。

山賀:あとやっぱり最近はちょっと忙しくなりすぎていますね。今までは動画をやる期間が3、4年あって、いろんな先輩の技を盗む期間があったんだけど、今は動画やったらすぐ原画の仕事をする、なんてことになっちゃっているんです。動画をちょっとやってすぐに原画を書けるわけがないんです。昔に比べると勉強期間がちょっと少なくなっちゃったというところは業界全体としてありますね。

今回の記事で取り扱った第一部と第二部では、山賀さんと野口さんがアニメ業界に入られた理由やアニメに関心のある学生たちの疑問に対しての回答などをいただきました。次回の記事で取り扱う第三部では、クールジャパンが騒がれるなどアニメに対する注目が高まっていく中で、アニメビジネスが今度どのように展開されていくのか?アニメの「これから」はどうなっていくのか?という疑問にお二人が答えてくださります。面白い内容ですのでぜひご覧ください!